哲学しようよ!恋も美もエロも孤独も、アタマに汗して考えよう白取 春彦(著)哲学と聞くと、難しいとか世間離れしている、役に立たないというようなイメージがのではないでしょうか。そんな印象を見事にぶち壊してくれる本です。(そんなイメージがなかったらすいません。)
本の中では、カント、ヘーゲル、キルケゴール、デカルト、サルトル、ハイデガー、ソシュール、ボードリヤール、ニーチェ、ウィトゲンシュタインなどなど、さまざまな哲学者・思想家たちが紹介されています。
なんか名前を聞いただけでも頭が疲れてしまいそうですが、この本では彼らの思想を身近な話に例えてわかりやすく、しかもユーモアたっぷりな文章で、また所々毒舌ぶりを発揮して紹介してくれるのです。筆者も気楽に読んでほしいと言っています。
形式としてはまず問いを立てて、筆者がいろんな人に扮して哲学者・思想家の考えを述べるというものになっています。
たとえばこういう問いです。
「あたし、朝なかなか起きれない人だからさ」と、自分のことを「〜な人」といういい方をする若い子と、簡単に社員のクビを切る経営者と、女の子を誘拐監禁して何とも思わない男との共通点をあげてみてください。すごく興味深い問いじゃないですか?私は全然分かりませんでしたが、続きを読むとそれはもう、ものすごく納得してしまいました。
また、現代社会のむなしさを感じましたし、この問いの回答の最後のあたりに書かれているような姿勢で生きていきたいとも思いました。
もう一つ紹介します。こんな問いもあります。
男はどうして卑猥なエロ本なんか見るのだろう?
なぜ、あらわな格好の女をチラ見して目を輝かせるのだろう?
「残業とセックスは家庭に持ち込まない」なんていってるけど、どこまで本気なんだろう?
いい歳をしてエロチックなものからなぜ卒業できないのだろう?
なぜ、週刊誌にエログラビアがあるのだろう?
会社役員はどんな神経でSMクラブに行くのだろう?
てなわけで、エロとは何か、考えてみてください。この問いに対する回答ではフランスの思想家、バタイユの思想を紹介しています。岡本太郎とも親しい交流のあった人ですね。このバタイユのエロティシズムについての思想に触れると、エロの仕組みがよくわかります。
たとえば、女性のスカートが風でめくれてパンツが見えるとなぜ男は喜ぶのかとか、なぜ外で行為に及ぶカップルがいるのか、なんてこともこれで説明がつくんじゃないでしょうか。
他にも浮気や心霊特集などの身近な問いや、なぜかアミダやクロスワードなんかも問われます。また、最初に挙げた人たち以外にも、プラトンやエピクロス、ボーヴォワール、メルロ=ポンティ、オルテガ、マルセルなど、さまざまな人の思想が紹介されます。
回答の部分では、別に問いのことのみについて話すわけではなく、問いは、まあ、あくまでつかみであって、そこから話を広げていくといった感じでしょうか。
身近な問いや「オッ!」と思わせるような問い出しておいてから、自由や道徳、時間、美しさ、愛といった哲学的な話に発展していくんです。(それほど身近でない問いもありますが…)
また、合間に架空の対談が2度あるのですが、これがまた面白かったです。ROUND1は女子高生VS哲学者、ROUND2はおやじVS女哲学者です。現実にはなかなか無い、異色の組み合わせですね。
哲学者が2人とも非常にユニークなキャラで笑えます。1人目の哲学者はいきなり毒を吐いてますし、2人目の女性の哲学者はとても真面目なんですが、時々かわいらしい面が出てきます。
まあ、ふざけているばかりではなく、哲学ってどういうものか、哲学は役に立つのかとか、哲学書の読み方についてなど、内容は基本的に真面目なものでして、「へえー」と思えるような話を次々としてくれるんです。
この本は気軽に哲学というものに触れることができる良い本だと思います。真面目さはもちろん、笑いあり、愛あり、毒舌あり、エロありです。これを読んで私の哲学との距離が縮まったような気がします。こういった本をもっと見つけたいですね。

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